ONE OF A KIND
あさのは について
麻の葉文様は、正六角形、正三角形、菱形から構成される幾何学図形で、さらに分解すると 内角が30° 30° 120°の二等辺三角形(三辺の比1:1:√3)となる。眺める角度、焦点の置き方によって、様々な幾何学立体が浮かび上がってくる。
再生や魔除けの意味がある三角形「鱗文」の集合体で、麻の葉に形が似ていることから、麻の葉文様と呼ばれ、魔除けの力を持つ吉祥文様として愛されてきた。
能「道成寺」能装束の鱗文
麻は、いにしえより食べ物や衣類のため広く栽培され、生活を支える植物としてだけでなく、神聖なものとして神事にも用いられてきた。縄文人は麻の縄によって土器に文様を施し、神社においては麻で作られた注連縄で結界を張る。能に用いられる小鼓 大鼓 太鼓の調緒もまた、麻である。
4月頃に種が蒔かれると真っ直ぐに伸びて、7.8月には4mにまで成長する。その強い生命力にあやかりたいと、日本では、赤子に麻の葉文の産着を着せる風習がある。
文様自体の歴史は古く、平安時代の截金や鎌倉時代の繍仏にすでに見られ、室町時代以降は、建築、彫刻、染織、漆工などに広く用いられている。
放射状にどこまでも伸び広がる力を秘めている無限文様、あさのは に想いを託して。
(妹背山婦女庭訓 お三輪 縮緬淺黄赤段鹿子麻の葉文様振袖 ©︎国立文楽劇場)